INTERVIEW

代替フッ素技術に基づく
高機能材料を提供

ユニケム株式会社
代表取締役
田中 藤丸
代替フッ素技術に基づく<br>高機能材料を提供
ユニケム株式会社は、代替フッ素技術・有機合成をコア技術として開発した高機能材料を提供している会社です。同社の事業内容と将来展望について、代表取締役の田中藤丸氏にお話を伺いました。(2025年4月11日訪問)

貴社の事業内容を教えてください。

ユニケムでは、フッ素系材料の製造開発をしています。特に、最近は環境規制されるフッ素系材料が色々と出てきており、その代替品を開発して提供することに力を入れています。フッ素系材料の中でも界面活性剤をメインに取り組んでいます。界面活性剤は非常に付加価値が高く、一社当たりの使用量も少ないので、我々のような設備投資が限定的なスタートアップでもメーカーとしてやっていけるため、事業として取り組んでいます。

会社の設立経緯を教えてください。

私はもともと前職でフッ素系材料メーカーに勤めていたのですが、自分で何かやりたいと思って会社を辞めて、コーティングか何かをやろうと考えて2019年に会社を設立しました。会社を設立してから、浦田さんからエンジェル出資してもらったりしながら、何をするか考えていたところ、付加価値が高くて生産力が少なくても事業が成立するような製品を選んでフッ素系材料をやっていこうという方向になり、現在に至っています。

田中社長のご経歴と起業にいたった経緯をお聞かせください。

私は大学・大学院と化学を学び、大学院の時は有機合成の研究をしていたのですが、実験もすごく嫌いで成績も良くありませんでした。フッ素系の化学企業に就職はしたのですが文系就職をしました。フッ素系材料企業の企画部門として7年ほど業務に携わってから起業しました。大企業を辞めて起業した理由ですが、大企業では色々な経験をすることができましたが、組織がしっかりとできて分業化されており、内向きの仕事も多いのが苦手だったというのが正直なところです。もともと人に命令されたりするのが苦手で、何か自分でやりたいという気持ちもありましたので、とりあえず何も考えずにまずは会社を辞めて考えることにしたというのが起業した経緯です。
「何か志があってこういうことがしたかったので起業しました」というのが一番いいかもしれないですが、私の場合はそういうことは一切なくて、どちらかというと何かチャレンジしたかったですね。当時30歳ちょっと過ぎたぐらいで、起業することに対してあまりリスクを感じていなかったです。失敗してもたかが知れているだろうと思っていました。まずは3年頑張ってやってみて、だめだったら再就職すればいいやと考えて始めました。本当に成り行きで、若かったし一回やってダメだったらまた戻ればいいなと考えていました。

ユニケム大阪工場

事業の基盤となる技術はどのようなものでしょうか?

ユニケムの事業基盤になっているのは、フッ素化学に関する技術・知見・ノウハウです。その中でも代替フッ素を作る技術が事業の基盤となっています。フッ素系界面活性剤をやられている各社も代替フッ素の技術開発はあまりされていないので、ユニケムにしかない技術ではないかと考えています。これを半導体用途などに展開して評価いただいており、実用化を目指しています。

どのような市場/アプリケーションをターゲットとされていくのでしょうか?

ユニケムの製品は界面活性剤などがメインで、半導体・塗料・インキ・潤滑剤など幅広い分野で使われます。その中でも特に半導体向けは力を入れてやっていきたい用途です。半導体用途では必ずフッ素系の界面活性剤を使っています。そのため、リスクのあるフッ素をできる限り少なくするというような技術開発を深めてユーザーの技術の向上や、環境リスクの低減に努めていきたいと考えています。

事業化に向けて現在どの程度まで進捗されているのでしょうか?

ユニケムを設立して5年半経ったところですが、まずはとりあえずの区切りとして売上10億円を目指しており、その見込がついてきました。会社を設立して1年目の売上はほぼゼロでしたが、2年目になって初めてお使いいただけるようになってきました。ただ当時は工場もなければ生産する人間もおらず、原料も調達できないという状態でした。最初は倉庫の一室みたいなところで立ち上げて、少量ながら売上が立つようになり、他にも採用が決まりそうだとなってきたので、2022年4月に現在の本社に移転してきました。そこで人も増やして生産体制も整えて、ある程度の量を作れるようになってきました。お客様も増えて既にエンドユーザーは100社を超えて採用されています。おかげさまで業界内での知名度も上がってきたので、今後は大きな案件をいただけるようなところまで来たのではないかと感じています。

今後の事業展開に向けた展望についてお聞かせください。

ユニケムとしては、まずは環境規制に対応する代替フッ素の技術を広げていって、ユニケムの技術を業界標準としていきたいです。またフッ素に限らず新しいことをやっていきたいとも考えており、たとえば直近でも非フッ素のコーティング剤や撥水剤など、フッ素に限らない開発をしています。ユニケムとしては、もちろん代替フッ素事業も重要ではありますが、会社の存続を考えると事業展開の幅を広げることは続けていきたいと考えております。基礎の土台としてはフッ素代替技術を基盤としつつ、化学という大きい範囲で横に広がってやっていきたいです。

素材化学関連のメーカーや商社との協業に、どのようなことを期待されますか?

化学の業界として新しいことをやることが難しくなっているような印象を受けています。新しい可能性はあるけれども時間がかかるところに対して、金銭的にもインフラ的にも大手が主導して投資していくような機能があれば面白いのではないかと思います。何かやりたいこと、新しいこと、素晴らしいアイデアを持っている方はいらっしゃると思いますが、実際にゼロからやるとなると、資金面とインフラ面が大きなハードルになると思います。起業するにあたって、そのあたりをリスクと考える方が多いと思うので、そのリスク感を薄めることができれば、起業する人が出てきやすくなる。出てきたとしても当たらなければ意味はありませんが、何十社と作っていけば大きく当たるものも出てくるのではないかと思います。

ウェビナーへの参加も含めて、日本材料技研(JMTC)とのコラボレーションについて、コメントがあればお願いします。

それで言うと、浦田さんには本当に感謝しています。私が本当に何もない起業の段階でご相談させていただいて、お金を出していただいたことに今でも非常に感謝しています。その後も、JMTCキャピタルを通じて資金的な支援もしていただいたにも関わらず、そこまで経営に対して口出しをせず、自由にやらせていただいているというところも非常に感謝していますし、今後も良い関係を続けていきたいと考えています。

最後に、このインタビューページをご覧になる方に向けて、
メッセージをお願いします。

ユニケムは、現在は主にフッ素を展開していますが、それ以外にも色々とやりたいと思っていますので、企業の方にもざっくばらんにコンタクトしていただき、情報交換して新しいことができれば一緒にやっていきたいです。また優秀な人材も積極的に募集していますので、ベンチャーでチャレンジしてみたいと思っていらっしゃる、若い化学系の開発の方がいらっしゃれば、ノックしていただけると嬉しいです。

ユニケム本社
※この記事は日本材料技研株式会社が運営するJMTCケミカル&マテリアルズ・スタートアップ・ウェビナーに過去ご登壇いただいた企業に対するインタビューです。

PROFILEプロフィール

田中 藤丸
ユニケム株式会社代表取締役
神戸大学大学院工学研究科応用科学専攻にて修士修了後、大手フッ素系材料メーカーにて企画業務に従事。2019年にユニケムを設立し、代表取締役に就任。

COMPANY DATA企業情報

法人名
ユニケム株式会社
設立
2019年10月
本店所在地
大阪府大阪市
事業内容
フッ素材料製品等の開発・製造・販売
ウェブサイト
https://uni-chem.co.jp/
インタビュー掲載日:2025年05月01日
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