光を使って世界を照らす
新材料を創造する

貴社の事業内容を教えてください。
illuminusは、レーザーを用いて新しい合金ナノ粒子などの新素材を作る研究開発をしている会社です。最近では、複合酸化物や半導体材料の新規合成、顧客企業様の既存材料の微細化やサイズ制御などのご依頼も頂いております。
会社の設立経緯を教えてください。
illuminusは、法人としては2016年8月に設立された株式会社GCEインスティチュートが前身にあたります。元々GCEは熱発電デバイスの研究開発を行う会社でしたが、その内部材料として用いる金属ナノ粒子、これ自体を事業化しようということで、2023年5月に会社分割で現在の当社となっています。
発電デバイスの効率を上げていくために、新しい構成や材料を探索している中で、当時は東北大学の准教授だった中村(現・illuminus取締役CTO)の技術に出会い、共同研究によってその技術を導入しました。その後、新型コロナのために往来ができなくなり共同研究も進まない中、2021年には中村がGCEに移ることになり、私もちょうど同時期に参画しました。しばらくして元・TDK会長の上釜さんからの「このナノ粒子自体を事業化すればいろんな場面で使えるでしょう」との助言も参考に、2023年5月に法人を分けた、これが当社の創業ストーリーです。中村と私とは、トンネルの入口と出口のようにバックグラウンドが異なりますが、我々2人にしか分からない葛藤も含め議論し、お互いを補完し、高め合う戦友です。

平野代表のご経歴と起業にいたった経緯をお聞かせください。
私自身は社会人初めは金融機関に勤め、企業への投融資や金融工学、審査・法人営業、金融恐慌時にはメガバンクへの資金支援や不良債権処理などの仕事をしていました。その後、楽天で事業責任者や、楽天カードの事業管理、M&Aや英語公用語化などに関わっていました。阪神大震災、東日本大震災の復興に仕事で関わった経験は職業観に大きな影響を与えました。次に、ハンズオンでの企業再建などを主するフロンティア・マネジメントというコンサルティング会社で7~8年仕事をし、電子部品や医薬品開発などの産業財や消費財など、複雑骨折のような企業も含めて、投資ファンドや銀行などの依頼で代表・CXOとして派遣され、企業価値の向上に努めてきました。
一通り、企業再建や事業育成・成長などに取り組み成果も出してきたところ、次にディープテック領域にも挑戦したいと考えるようになりました。私は法学部出身のド文系で、理工学的な技術的思想と経済社会とを結ぶ、技術法務や知的財産権といった法体系に対して長らく関心を持っていました。技術法務はとても重要ですが、大学や大学発ベンチャーではシーズ自体を先に論文などで公表してしまい事業化できないことがあります。一方で金融のバックグラウンドからすると、知的財産権は本来、有価証券のようにある程度は価値の算定をしたいところ、現実にはなかなかそうはいきません。私の仕事軸「事業は夢を創り、財務は夢を護る」に照らし、自分だったら何ができるだろうという想いは持っていました。
そうした中で、多くのディープテックやVCファンドに出資し、1,000億超のPEファンドの運用もしているエンジェルの方から、適任なディープテック経営人材が枯渇しており、その経営をやらないか、とお誘いをいただきました。研究成果を象牙の塔から世知辛い濁世の社会に移行するディープテックは、評価尺度が論文発表や引用件数などから企業価値や業績に変わる、宗旨替えの変曲点です。清濁併せ呑むというか、事業や業績、組織、財務に対して結果責任を果たした経験、技術法務や交渉、時間軸・金銭感覚を織り交ぜ統合して判断・行動できることが重要になるとの指摘でした。医薬ベンチャーなど経営ポジションのお声がけは今もありますが、輸入に頼る日本はディープテックなどが大きくなって外貨を獲得していかないと先が細る国なので、その役に立ちたい私の人生観もあり、2021年に前身のGCEにジョインしました。
そして、私自身の経験や職業観を踏まえつつ、2023年の会社分割によって今のilluminusに再編、illuminusメンバーの行動規範をクレドに定め、仲間同士で想いの共有に努めています。私自身は当社メンバーを冒険旅行の仲間だと考えています。

事業の基盤となる技術はどのようなものでしょうか?
CTOの中村は18歳で入学してから半生を東北大学で過ごしてきましたが、会社分割と取締役CTOへの任用は当時、中村本人も青天の霹靂だったと思います。彼がかれこれ十数年ほどを費やしたのがレーザープロセスを用いた新材料の探索であり、当社のコア技術です。
電子部品材料や半導体、パッケージング工程もそうですが、何らかの金属ナノ粒子、例えばニッケル、銅、金、スズといったもの、もしくはそれを合わせたものは多方面で用いられています。そして、たとえばEUの規制でRoHS指令が入って鉛は使えませんというようなことになると、新しい代替材料が求められてくることもあります。貴金属材料はそれ自体が高価だったり、国際調達網に制約があったりします。そういった中で、新しい材料が開発され利用されるようになっていくのですが、金属はそれぞれに固有の性質があります。例えば電気が通りやすいのか通りにくいのか、錆びやすいか錆びにくいか、あるいは耐熱性として溶けやすい溶けにくいといった特性があります。それぞれが固有の特性を持っている中で、単一元素だけで材料として適している用途もあれば、そうではない場面や課題も出てきます。そこで、illuminusの技術によって、例えば電気が通りやすく錆びにくいであったり、貴金属の使用量をコントロールするであったり、そういった新しい特性のある材料をご提供できると考えています。
合金ナノ粒子を作る技術はこれまでにも全くなかったわけではありませんが、金属には混ざりやすいものと混ざりにくいものがあります。例えば金・プラチナなど金属種によっては仲の悪い金属種が存在しますが、従来にはない組合せで新たな特性のナノ材料を創出することがilluminusならではの領域です。金属元素は飛び交う電子の振る舞いが合成に大きく影響しますが、波長の短いレーザーを照射することによって、物理還元反応によって均一に固溶させられる機序が、illuminusのコア技術です。また、ナノ粒子の粒径について、比較的粒径が大きいミクロンサイズからいわゆる一桁ナノ粒子まで、粒径サイズをコントロールし、金属種をコントロールできるところもilluminusの領域です。
最近は、金属のみならず、酸化物、半導体などの微細化や粒径制御のご依頼も増えています。加えて、発がん性が危惧されるヒドラジンなどの還元剤を用いず後処理工程の負担が小さいこと、室温・大気化で合成可能な簡潔なプロセスであるため、環境に優しい側面もご評価頂いており、試験機の納入も進んでいます。

どのような市場/アプリケーションをターゲットとされていくのでしょうか?
大別すると2つあると考えています。1つは、電子部品の材料や半導体のパッケージングといった電子半導体といった領域です。もう1つは、新しいエネルギーや脱炭素といった領域においては触媒が非常に重要な役割を果たしますので、この触媒材料の領域です。また、貴金属の調達や使用量の低減は産業共通の重要なテーマですので、当社の合金ナノ粒子の技術を通じて貢献していきたいと考えています。
事業構造としては、大きくは2つを軸に考えています。1つはilluminusがナノ粒子を製造してご提供する、材料の製造販売です。もう1つは、ヒドラジンなどを用いず省薬品、省エネルギーで環境にも優しい当社のプロセス自体を装置として事業化していくという考えです。基本的にはこの2つを軸とした上で、その掛け算でそれぞれの用途ごとに展開できればと考えています。その中でも、illuminusとしては新しいプロセス・新しい材料の創出にモチベーションがありますので、特に先端的な領域についてはilluminus自身でできるようにしていきたいと考えています。
当社の成長の旅程では、バックグラウンドや経験、国籍が異なる新しいメンバーが増えていくと思いますが、その基盤としてクレドが大切になると考えています。会社と個人とがともに成長できる会社でありたい、個人が仕事で一皮むける会社でありたい。名立たる会社などから当社にジョインしたちょっと常識外れな当社メンバーにとって、そんな会社でありたいと希求しています。
事業化に向けて現在どの程度まで進捗されているのでしょうか?
「技術は使われてこそ磨かれる」、長らく懇意にしていただき信頼を寄せているグローバル企業の本部長からよく言われる言葉を実践していく只中です。
illuminusの製品は材料ですので、それを使っていただくのはアプリケーションや部材メーカーなど川下側の企業様になります。現在は、そうした川下側の企業様にPOC(Proof of Concept)やフィージビリティ・スタディをしていただいているステージです。私たちの目標「世界を照らす新素材を次の当たり前にする」ことを十合目だとすれば、まだ山に登り始めた一合目辺りだと思います。現在は、十数社ほどの企業様に、サンプルワークでお試しいただいていて、そこで特性などを評価いただいています。そのうち幾つかは、共同研究・共同開発というフェーズに進んでいるところです。最初は「来た球を打つ」ことがほとんどですが、共同開発の中では、お客様の用途に向けて最適な材料・最適な組成は何か、所望の機序、効果効能が出るかどうか、信頼性・安定性といった他のパラメータも越えられるか、といった最終仕様をすり合わせていくことになります。お客様の期待としては、既存の材料を置き換えて改善するレトロフィットな開発と、新しくこれから立ち上がる市場に向けた開発とが、50:50くらいのイメージです。

今後の事業展開に向けた展望についてお聞かせください。
日本には多くの素晴らしい素材メーカー様があり、グローバルマーケットの中でニッチなポジションで、そのセグメントの中ではシェアが高く収益率も高いという会社が幾つも存在します。illuminusのベンチマークとして素晴らしい会社だと考えているのは、例えば新潟のナミックス様です。ナミックス様は、半導体封止材の領域においてグローバルシェアが4~5割あり利益率も高いですし、そういった会社様は素晴らしいなと参考になります。他にも、半導体成膜装置のオプトラン様など、ニッチでシェアも利益率も社員給与も高い会社で、「この分野でいったらこの会社しかないよね」と国内にとどまらず思われるような、そういった会社を参考にしたいと考えています。
素材セクターはPERが低く資本市場での評価がいまひとつな現状に対して、微力でも貢献したいと考えています。
素材化学関連のメーカーや商社との協業に、どのようなことを期待されますか?
大手企業様では、会社が大きく研究開発パイプラインが多いがゆえに、隣の人が何をしているのか分からないといった例があるのを、我々の側から見ていて感じます。そういった企業様とより包括的にご一緒させていただければ、効果的・効率的にお役に立てるのではと考えています。おかげさまで用途の領域は徐々に広がってきている中で、量産技術の実装をご一緒いただけるような企業様とのご縁も深めていきたいと考えています。スケールアップの局面では、単純に装置としての量産性だけではなく、前工程や後工程もあれば周辺環境、サプライチェーンも重要になります。研究開発フェーズの現段階は小さなスペース、少ない人数でできますが、いわゆるプロダクトマーケットフィットを外部にも客観的に見せる時期になれば、当然ラボで足りるものではありません。その時には、サプライチェーンも考えて次の生産拠点を探索していき、またそのために人も確保するということを念頭に置かなければなりません。一方で、今は人手不足という環境もありますので、そういった時には外注・業務委託で受けていただけるパートナー企業様と協業し、ファブレスの部分を持ちながらやっていくというのが今の想定です。
ウェビナーへの参加も含めて、日本材料技研(JMTC)とのコラボレーションについて、コメントがあればお願いします。
2023年の実質創業からしばらくは基礎体力固めを優先し、意識的に対外PRは控えホームページも出さずにいました。今年の初めにウェビナーに当社が登壇させていただいたことによって、聴講されていた会社様のおそらく数割とは、何がしかのお付き合いがあります。そういった意味ではウェビナー登壇の機会はひとつの転機で感謝しており、JMTCには足を向けて寝られないというのが率直な気持ちです。
JMTCキャピタルは、illuminusにとって最初の外部ファイナンス先で、この縁がなければ現在の展開はありませんし、会社が無くなっていた可能性もあります。それくらいilluminusとしては大きな分水嶺だったと捉えています。同時に、JMTCと組ませていただいた結果として、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のディープテックスタートアップ支援事業にもアプライし、採択されることができました。その採択の結果として、今般のInnovation Leaders SummitにもNEDO推薦で出展しTOP100に選んでいただきました。現在の活動のきっかけの多くが、JMTCとご一緒した結果です。これからも、ファイナンス面などのご相談もあると思っていますし、JMTC自身も素材企業という立ち位置もある中で、illuminusよりも先行している先達者として、学べるものは学びたいと思っています。
日本でも大学発ベンチャーが4,000~5,000社と増えてきたことは良いことです。しかし、ぬるま湯という報道もあるように、零細企業や登記だけの休眠会社、外見上の設立企業数目的の大学も散見されるという実態は、片や都合の悪い真実だと感じます。当社も他人事ではなく、新陳代謝や淘汰がない経済は健全ではありませんし、例えば米中のベンチャーのスピード感には太刀打ちできません。今後は、ある種の再編・再構築、大学発ベンチャー間の企業間連携やM&Aなど、いずれそうした局面が加速するだろうと考えています。そのような局面になると、既存のベンチャーキャピタルとはまた違って、ご自身も素材屋として、休眠特許の活性化を事業の軸に据えているJMTCの存在が、渦の中心のひとつになっていく未来も予見できます。illuminus自身は、渦に溺れることなく、自ら渦を作り渦の中心となる会社になりたいし、その中心には当社のクレドがあると考えています。
最後に、このインタビューページをご覧になる方に向けて、
メッセージをお願いします。
我が国日本は、エネルギーも食糧も輸入に頼っている国です。また国民経済の観点では、社会保障費が膨大に増え続け、同時に政府債務比率も高く、通貨価値が劣化し名目インフレが常態化しつつある、歴史的に見ても稀有な状態にあります。その中で、素材産業がある程度以上の外貨を獲得してこの国の経済を支えているという事実は大きいと考えています。illuminusはその一員として、そこに役に立てるような会社に早くなりたいと考えています。
またSTEM教育の影で法学部はじめ文系は人気凋落の一途ですが、研究者が苦手なことで文系人材が協力できることは数多ありますので、文系人材にも挑戦していただきたいです。
子供たち世代、次の世代に、より良い社会、より良いふるさと、より良い環境を引き継いでいくことは、国民の皆様の多大なご負担で維持・運営されている大学を起源とする大学発ベンチャーの重大な責務です。そういった観点からご一緒いただける方々とは、いつでも手を取らせていただきたいと考えています。

PROFILEプロフィール
COMPANY DATA企業情報
- 法人名
- 株式会社illuminus
- 設立
- 2023年5月
- 本店所在地
- 東京都中央区
- 事業内容
- 完全固溶合金ナノ粒子の受託開発・製造・販売
- ウェブサイト
- https://www.illuminus.co.jp/
-
ミクロな技術で
人類と地球のミライを織りなすFiberCraze株式会社 -
独自のbio-inspired技術により
サステナブル社会を共創するAZUL Energy株式会社 -
有機ハイドライドを使った
水素貯蔵・供給システム株式会社フレイン・エナジー -
低消費電力コンピューティングを
単分子誘電体で実現する株式会社マテリアルゲート -
代替フッ素技術に基づく
高機能材料を提供ユニケム株式会社 -
振電相互作用密度理論により
機能性分子をピンポイント設計株式会社MOLFEX -
ソフトエレクトロニクス分野の
イノベーションハブとなるOPERA Solutions株式会社 -
モノの機能を自在に設計可能な
社会を実現するNature Architects株式会社 -
素材のプラットフォームを創出し
素材の流動性と循環性を最大化Sotas株式会社 -
世界をリードする単結晶技術で
新材料・新技術を迅速に社会実装株式会社C&A -
身の回りに溢れる未利用熱を
次世代のエネルギー源へ株式会社GCEインスティチュート -
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微量物質の高効率吸着を実現株式会社ディーピーエス -
藻類の研究開発で
人々と地球の未来に貢献する株式会社アルガルバイオ -
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次世代産業分野に貢献するウィンゴーテクノロジー株式会社 -
ヒトと農作物と環境に
優しい農薬を株式会社アグロデザイン・スタジオ -
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世界をリノベートする株式会社Gaianixx